安全保障関連三文書の改定を目前に控えて(私見)
政府による安全保障関連3文書の同時改定を目前に控えて私見を公開しました。PDF版はこちらからご覧いただけます。
政府は今月中に「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「中期防衛力整備計画」のいわゆる安全保障関連三文書を同時改定する方向で最終調整している。初当選以来、外務委員会・安全保障委員会・内閣委員会などに所属し、急速に厳しさを増す安全保障環境について質疑を繰り返してきた。今回の安全保障関連三文書の同時改定を目前に控え、下記の通り所感を述べる。
〇十分な国会審議なくして国民の支持は得られない
中国・ロシア・北朝鮮と三つの核保有国が軍事的な拡張と挑発行為を活発化し、我が国は三正面からの脅威を受けており、安全保障環境は戦後最悪のフェーズを迎えている。
そのような認識のもとで、国会審議で三文書の改定について防衛大臣や内閣官房長官らを中心に政府の見解を正してきたが、政府は「現時点では詳細をお応えできない」との答弁を繰り返すばかりであった。与党の防衛大臣経験者からも「国民の安全安心に関わる議論については選挙で選ばれた我われ国会議員の議論なしに、大枠をはめられていくということはあってはならない」との苦言が呈され、経済安保担当大臣は「国家安全保障戦略の内容・全体像も知らされていない」と発言し、改定を目前に控える中で閣内ですら防衛力整備の内容が共有されていないことが明らかになった。
安全保障関連三文書の改定プロセスは実に不透明であり、多くの国民は不十分な断片情報にしか接することができていなかった。政府の一部しか国防論議に関与できず、国会審議を一切拒否する現状は、我が国の安全保障政策の限界と脆弱性を露呈している。
〇ミサイル脅威に対する対処について
近年、我が国に飛来する可能性のあるミサイルの増加・多様化・能力向上が顕著であり、これまでのように米国に全面的に依存することが難しくなる中、危機をエスカレーションさせないために抑止力を向上させる必要が高まっている。
特に憲法と専守防衛を堅持した上で、我が国のミサイル防衛体制を補完するため、ミサイル脅威に対して阻止する能力を向上させる議論を真正面から深めるべきである。ミサイル阻止力は、①自衛隊の対処能力の向上、②米軍による効果的な作戦遂行の支援、③総合ミサイル防空体制の強化の観点から検討を行う必要がある。
日本周辺では既に多くの国が地上発射型の弾道・巡航ミサイルを配備しており、我が国とのミサイル・ギャップは深刻になっている。中国の保有ミサイル数は2000発以上と見積もられ、北朝鮮・韓国・台湾も射程1000km以上のミサイルの開発・配備を進めている。日本が今からミサイル阻止力を向上させたとしても、軍拡競争の引き金になるとは考えにくい。
またその行使の際の手続き及び要件を透明性のある形で明示し、民主的統制が確保されるべきである。事態対処法に規定される「対処基本方針」に国会承認を義務付けるよう、三文書改定後も政府に働き掛けていく。
〇国民の安心に繋がる現実的な安全保障政策
いずれにしても十分な国会審議と正確な情報公開、国民的な議論なくして、政府の一方的な政策決定に賛成することはできない。政府の説明責任が十分に果たされてなく、個別事項において更に議論を深めるべき点が幾つも残っている。ただ、厳しさを増す安全保障環境に迅速に対応することこそ今、求められている。建設的な議論を通して国民の安心に繋がる安全保障体制の確立に向け、引き続き国会の一員として現実的な外交・安全保障政策にコミットする覚悟である。
以上