太ひでしが、「グローバルに考え、地域密着で行動する」
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Vol.96: 令和の米騒動 新しい農業モデル構築へ

 昨年夏の米価格高騰と米不足から始まった令和の米騒動は終息の兆しが見えません。全国のスーパーで販売された米の平均価格は本年11月に5キロ4,444円まで高騰し、4,000円台は7週連続となりました。昨年5月は5キロ2,122円でしたから、わずか1年半で2倍以上に値上がりするという異常事態となり、国民不安が高まっています。

 今回の騒動は日本の農業政策が危機的な状況にあることを浮き彫りにしました。猛暑による2年連続の不作やインバウンドによる消費増などを背景に、政府が米の需給動向を読み間違えて過度に生産を抑制してしまったことが主因でした。2018年に米の減反政策を廃止後、市場任せとなった生産調整は十分に機能せず、価格下落は農家の経営を直撃しました。一方、消費者の食生活は多様化し、国産米の価値が十分に評価されない状況も広がっています。今こそ生産調整で米価を高止まりさせる政策から、米価を下げたうえで、農家の所得を補償する政策に転換する抜本改革に踏み切るべきです。

 生産者への支援策の一つとして期待されるのがソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の普及です。農地に支柱を立て、その上部に太陽光パネルを設置して農業と太陽光発電を同時に行う仕組みです。太陽光パネルで発電した電気は売電や自家消費に利用でき、農作物の販売収入と合わせて農業経営の安定化につながります。昨今、メガソーラーの環境破壊が問題ですが、日本発で次世代エネルギー技術として世界的に注目されるペロブスカイト太陽電池はその特性から環境負荷の低減が見込まれ、主要原料のヨウ素は日本が世界シェアの約3割を占めています。先日、千葉県匝瑳市の国内初の実証実験を視察しましたが、既に稲作での活用も視野に入れた取り組みが急ピッチで進んでおり、日本の食とエネルギーの安定確保へ向けた計り知れないポテンシャルを秘めています。

 そして「食と農」の新しい拠点として、私の地元の横浜・上瀬谷で開催される2027年国際園芸博覧会(花博・GREEN EXPO 2027)の跡地の活用が期待されます。花博跡地の約50haにわたる農業振興地区は都市部に残された広大な土地であり、都市型農業の可能性を広げる絶好のエリアです。ソーラーシェアリングに加え、AIやロボット、IoTを活用したスマート農業、環境負荷を抑えた循環型農業など次世代技術の実証フィールドとして整備を進め、企業・大学・研究機関が共同で研究開発を行うことで、上瀬谷発の農業イノベーションの創出を提言していきたいと考えています。

 こうした取り組みにより、花博跡地を「農業の未来を切り拓く複合拠点」として整備することで、神奈川のみならず首都圏全体の食料安全保障・地域経済・環境政策を同時に推進する起爆剤となる可能性を秘めています。令和の米騒動を混乱で終わらせるのではなく、農業の構造改革の契機として、生産者・消費者・地域社会が支え合う循環型農業へと転換することで、食料安全保障の確保を目指してまいります。

2025年11
衆議院議員 太 栄志 拝