太ひでしが、「グローバルに考え、地域密着で行動する」
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Vol.91: 拉致問題解決を目指し行動する

 国会で議席を預からせていただいて以来、私は北朝鮮による日本人拉致問題をライフワークとして取り組んできました。2002年の小泉元首相の訪朝から23年が経過しましたが、その後、一人の拉致被害者の帰国も実現していません。これは政治の責任であり、国会議員の一人として深く反省し忸怩たる思いです。「必ず拉致被害者を奪還する」という強い国家意思を示して、解決のためにあらゆる手を尽くさなければなりません。

 先日、横田めぐみさんが当時中学1年生の時に拉致された新潟市内の現場を訪れました。下校中に閑静な住宅街の一角で日常を突然奪われた現実を目の当たりにし、胸を締め付けられる思いでした。めぐみさんは47年間という長い歳月にわたり帰国を果たせず、昨年還暦を迎えられました。また同時に、拉致被害者の蓮池薫さんと面会し、「政治家が腹を決めればこの問題は解決します。冷静に情勢分析をして戦略を練った上で行動してください」と激励を受けました。これらの現実を胸に刻み、現状の硬直状態を打破して、拉致被害者を取り戻すために全力で働く覚悟を新たにしました。

 国会では拉致問題特別委員会に所属し、これまでに4回質疑に立ち、日本の主体的な取り組みを政府に求めてきました。北朝鮮との交渉ではトップ同士の日朝首脳会談の実現が重要です。これまで実務者間の日朝交渉が繰り返されてきましたが、大きな進展はありませんでした。北朝鮮ではあらゆる意思決定が最高指導者・金正恩氏に集中している以上、拉致問題の最終的な解決手段は首脳同士の直接対話です。その環境整備のために、米国や韓国など関係国への働き掛けを含めた議員外交を積極的に展開していきます。

 北朝鮮が会談に応じざるを得ない環境をつくり、日本が交渉の主導権を握るためには、北朝鮮に対する実効的な圧力を更に強化する必要があります。例えば、日本国内で事実上の北朝鮮大使館の役割を担う朝鮮総連に対する資産凍結や核ミサイル開発の資金源となっている暗号資産の窃取に対する国際的な共同制裁など、より踏み込んだ制裁が必要です。また、北朝鮮の政治体制に変化があり、拉致被害者を救出できる機会が到来する可能性に備え、自衛隊による人質奪還作戦に必要な法整備・訓練の準備を進めることも政府に提案しました。

 現在、トランプ政権は米朝首脳会談に積極的な姿勢を見せていますが、米朝交渉で拉致問題が置き去りにされることが決してあってはなりません。そして、ウクライナ戦争を契機にロシアと北朝鮮の軍事的協力が深まり、国連安保理ではロシアが拒否権を発動し、新たな北朝鮮制裁や監視強化が困難な状況にあります。今こそ日米韓がリーダーシップを発揮し、北朝鮮の不正や人権侵害を許さない国際枠組みを構築していくことが不可欠です。

 拉致問題では日本の国家としての存在そのものが問われています。国の主権と国民の生命財産を守ることが政治の最大の使命であり、主権国家としてこれ以上、拉致被害者を放置することは許されません。他人事ではなく、私たち日本人に対する重大な国家犯罪として、どうか一人でも多くの皆さんに関心を持っていただき、拉致問題の解決を求める声を上げ続けていただきたいと心から願っています。私自身、引き続き拉致被害者奪還を目指し行動していきます。

2025年6
衆議院議員 太 栄志 拝