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Vol.61:日本、中国のTPP加盟後押しで自己改革促せ

 日本はこれまで主体的・長期的な対中戦略を欠いてきました。米中対立が激化する中、我が国の生存と自由、民主主義の価値を守り、中国との共存を見据えた戦略を早急に打ち出すべき局面を迎えています。

 中国を既存の国際秩序に組み込むことは不可能ではありません。米国離脱後、日本が主導的立場を担ってきた包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)に中国が2021年に加盟申請を行ったことは一縷(いちる)の望みであり、千載一遇のチャンスです。中国の新規加盟にあたり、市場経済を支える高い透明性と国際通商ルールの順守と履行など、中国にTPPの高い要求水準を課すことで自己改革を促す絶好の機会です。

 中国では少子高齢化による経済成長率の鈍化は最大の懸念材料です。TPP加盟は技術革新や生産性向上をもたらす外圧として有効であると改革派がかねて主張してきました。昨年、日本の民間シンクタンクによる日中対話フォーラムで中国の若手の文化人やメディア関係者らと対話した際には、加盟推進に賛同する声が大勢でした。

 日本にとって重要なのは加入手続きの段階で中国の本気度を見極め、知的財産権や国有企業の扱いなど中国経済が抱える問題点で決して妥協しないことです。また、加入後も順守状況を監視する仕組みを導入すべきです。加えて、米国の再加盟も粘り強く交渉しなければなりません。

 中国の急速な台頭に対し、米国との強固な同盟を活かして既存の国際秩序を堅持することが肝要です。日米両国は伝統的な安全保障領域では利益を共有する一方、経済上の利益は必ずしも一致しません。最大の貿易相手国・中国と相互利益を確保しつつ、日本の国益を最大化する巧みな対中戦略が今こそ求められます。中国のTPP加盟をそのきっかけにすべきです。

2023年2
衆議院議員 太 栄志

※ 全文は日本経済新聞(2023215日)朝刊に掲載されました。以下よりご覧ください。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD071OP0X00C23A2000000/