Vol.59:国民の安心につながる現実的な安全保障体制確立へ 安保三文書改訂を受けて
政府は「国家安全保障戦略」など安保関連三文書を閣議決定しました(12月16日)。中国、ロシア、そして北朝鮮と三つの核保有国が軍事的な挑発行為を繰り返し、戦後最悪の安全保障環境となる中、国民を守るために外交力と防衛力の強化を急がなければならないのは火を見るより明らかです。地元でも平和を守るための政治の対応を促す声が多く寄せられています。
外交・安全保障政策を専門に取り組んできた経験から、三文書改定による防衛力強化の具体的な内容を防衛大臣や外務大臣、内閣官房長官らに質疑を繰り返してきましたが、「現時点では詳細をお応えできない」との答弁を繰り返すばかりでした。国防政策の要諦(ようてい)は「自分たちの国は自分たちで守るという国民の覚悟」であり、国民不在の国防論議では国を守れません。ウクライナや東アジア情勢を受けて日本の安全保障に不安を抱く国民が急増しており、今こそ開かれた国民的な議論が必要です。政府の一部しか国防の議論に関与できない現状は、我が国の安全保障体制の限界と脆弱(ぜいじゃく)性を露呈しています。
そして近年、各国のミサイルの増加・多様化・能力向上が顕著となり、従来の防衛システムだけで国民を守ることは極めて困難になっています。そのため、専守防衛を堅持した上で、我が国のミサイル防衛体制を補完するため、ミサイル脅威に対して阻止する能力を向上させる議論を真正面から深めるべきです。東アジアでは既に多くの国が地上発射型のミサイルを配備しており、我が国とのミサイル・ギャップは拡大しています。日本のミサイル阻止力の向上によって、軍拡競争の引き金になることは考えられません。
しかしながら十分な国会審議と正確な情報公開、国民的な議論なくして、政府の一方的な政策決定に賛成することはできません。説明責任が十分に果たされてなく、個別事項において更に議論を深めるべき点が幾つも残っています。ただ、厳しさを増す安全保障環境に迅速に対応することが求められる以上、建設的な議論を通して国民の安心に繋がる安全保障体制の確立を急がなければなりません。国家の存亡に直結する国防問題で党利党略は必要ありません。引き続き国会の一員として現実的な外交・安全保障政策の展開に関わっていく覚悟です。
2022年12月
衆議院議員 太 栄志 拝