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Vol.56:韓国訪問 若手の議員外交で日韓関係の危機を乗り越える!

8月下旬に一期生の国会議員の仲間8名で訪韓しました。新型コロナで海外渡航の制約があり、徴用工問題で日本企業の資産現金化の懸念が高まるなど難しいタイミングでしたが、現地で韓国の外務大臣や与野党の国会議員、歴代の駐日韓国大使、大学教授、シンクタンク研究員らとの面談をこなしました。

今回の訪韓は、若手でしがらみのない新人議員の積極的な議員外交で、国交正常化以降で最悪と言われる日韓関係を改善する糸口を探ることが目的でした。徴用工問題や慰安婦合意の破棄、韓国艦艇による自衛隊へのレーダー照射事件、日本の対韓輸出管理規制厳格化などを受けて両国関係は膠着しています。本格的な首脳会談は10年以上も開かれていません。この状況の打開には未来志向での政治の力が必要です。実際、複雑な日韓関係はこれまで何度も政治家同士の人と人のつながりで危機を乗り越えてきました。

 韓国でこの5月、自由や民主主義の価値と日米韓関係を重視する尹錫悦政権が誕生しました。北朝鮮との融和を優先してきた前政権と違い、尹氏は就任前から日韓関係修復へ向けたメッセージを発信し続け、韓国の光復節(8/15)では日本を「自由を脅かす挑戦に対して共に力を合わせる隣人」と述べるなど、歴代大統領の対日姿勢とは明らかに一線を画しています。実際、政権支持率が下がり続けても日韓関係を政権浮揚に政治利用することなく、逆にその重要性を説き続けています。今回の訪韓で面談した朴振外務大臣からは、「自由、人権、法の支配という普遍的価値を共有するパートナーである日本との関係改善へ向け、戦略的な視点から粘り強く取り組む」という尹政権の意志を確認できました。今回の訪韓の一番の収穫の一つです。

 しかし韓国の政権交代のチャンスを日本が活かせていません。韓国への強硬姿勢が続き、メンツが優先され柔軟な対応ができていません。その象徴が韓国への輸出管理規制です。2019年以降、徴用工問題への事実上の報復措置として日本政府は半導体材料の韓国向けの輸出について管理規制を厳格にしています。しかし韓国側は日本の求めに応じて管理体制の改善を前向きに行い、実質的な効果が既に薄れている以上、我が国も政策転換を検討すべきです。経済安全保障の観点から我が国のサプライチェーンの多角化を図り、日米韓3カ国の協力を強化するためにも必要なことです。今回面談した韓国側からだけでなく、日本の有識者からも同様の声が多く上がっています。

 領土問題や歴史問題など我が国の主権に直結し、国家間の合意に関して安易な譲歩は許されません。しかし東アジアの国際環境が激動し、両国が共通して抱える国内課題を解決するためには、政治が優先順位を明確にして協力の枠組みをつくるべきです。特に中国、北朝鮮、ロシアからの共通の軍事的な脅威に晒(さら)される日韓は外交・安全保障の協力強化を急ぐべきです。まずは日韓外務・防衛閣僚協議(2プラス2)の実施やクワッド(日米豪印戦略対話)への韓国の参加、日米韓共同軍事訓練定例化、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)正常化、台湾有事・朝鮮半島有事の際の共同対処体制構築などは早急に実現すべきです。そして我が国の最優先課題である北朝鮮による拉致問題でも日韓及び日米韓が協力して被害者救出へ力を尽くすべきです。今回の訪韓でも繰り返し拉致問題解決へ向けた協力を呼びかけましたが、先日、ワシントンで開催された日米韓3カ国の国会議員による北朝鮮問題での国際会議に出席しました。日本と同様に500人以上の拉致被害者を抱える韓国との情報共有を密に行いながら、米国及び国際機関を有効に活用して被害者救出へ突破口を切り拓く取り組みを加速すべきです。

 今回の訪韓では韓国与野党の若手国会議員との交流を多く持ち、安全保障や気候変動、再生可能エネルギー、首都一極集中、少子化対策といった両国が抱える共通課題を巡り前向きな話し合いができました。特に今回実感したのは、韓国で日本の大衆文化が開放された1998年以降に成人した私たち30~40代の世代は、お互いの国で有名なドラマやアニメなどの話題でも共感できることが多くあるということです。私たちの世代は上の世代と異なる関係構築の可能性を秘めているとの手応えを十分に掴めました。引き続き戦略的な観点から議員外交を展開し、日本とアジアの平和と繁栄のために日韓関係改善に力を尽くしてまいります。

2022年9月
衆議院議員 太 栄志 拝