太ひでしが、「グローバルに考え、地域密着で行動する」
(Think globally, act locally)中で見えてくることを発信しています。

Vol.38:尖閣が危ない!~軍事衝突の回避に本気で向き合う~

 各国が新型コロナの対応に追われる隙を突き、中国が海洋進出を急速に進めています。尖閣諸島周辺の日本領海に中国海警局の船が頻繁に侵入しており、不測の事態がいつ起きてもおかしくありません。
 2月に施行された中国の「海警法」は国連海洋法条約に明らかに違反しており、中国が東シナ海や南シナ海の全域に主権があるかのように振る舞うのは常軌を逸しています。日本政府は外国公船や軍艦が尖閣諸島に上陸を強行した場合、凶悪犯罪として刑法の危害射撃が可能になるとの見解を示しました。しかし「やられたら、やり返す」の発想では中国の挑発をエスカレートさせかねません。国内法の枠内での「犯罪」と捉えるのではなく、我が国への「主権侵害」として冷静かつ毅然と対処し、日本の外交力と海洋力で尖閣を守り抜くことが必要です。

 まず第1に、尖閣周辺における現場対応力の強化が必要です。自衛権に基づいて自衛隊が適切に任務を果たせる環境整備は政治の重要な役割であり、中国への抑止力になります。しかし海警に対し自衛隊が出動すれば中国が軍を送り出す口実を与えかねません。まずは海上保安庁の巡視船を増強し、領海保全の任務を果たせるように法改正すべきです。また海保と自衛隊がグレーゾーン事態で切れ目なく連携できるように領域警備法の今国会での成立は必須です。

 第2に、そもそも尖閣問題の当事者であり同盟国である米国に旗幟を鮮明にさせることです。米国の新政権とも尖閣での米軍の日本防衛義務を確認しましたが、更に踏み込む必要があります。沖縄返還(1972年)の際に米国は尖閣の施政権を日本に返還しましたが、中国への配慮から尖閣の領有権に関して中立・不関与の立場を取っています。これが今日の中国の対日攻勢の原動力となっています。日米の強固な連携で中国に対処すべく、対米交渉力が試されます。

 第3は国際社会との連携です。日米協力が基軸ですが、中国がインド太平洋地域で米軍を凌ぐ軍事力を既に保有し、2028年にも経済規模で米国を上回ることが予想される中、米国だけに頼っていればうまくいく時代は終わりました。クアッド(日米豪印4カ国)での協力に加え、欧州諸国との連携強化も目指すべきです。ウイグル自治区や香港、チベット、台湾、サイバー空間等での中国の行動に欧州の反発が広がっています。定期的な共同訓練を軸とした新たな多国間海洋協力体制で、中国の力による一方的な現状変更に歯止めをかける取組みを日本が粘り強く主導すべきです。

2021年3月
太ひでし 拝