【国会活動】内閣委員会で参考人質疑を行いました(2023年3月17日)

 内閣委員会で「新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律」に関する参考人質疑が行われました。以下の通り、参考人の先生方に質疑を行いましたので、是非ご覧ください。

(参考人)
・国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 国際感染症センターセンター長 大曲貴夫 先生
・川崎市健康安全研究所所長 岡部信彦 先生
・一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会理事長 草場鉄周 先生
・一般社団法人日本医療法人協会副会長 太田圭洋 先生

★議事録★

○太委員 おはようございます。神奈川十三区の太栄志でございます。  先生方に質問させていただきます。  まず、今後の我が国の感染症対策、そして危機管理体制の強化へ向けて、大変貴重な御助言をいただきましたこと、心から感謝申し上げます。  まず、草場先生にお伺いさせていただきたいと思います。  昨年の有識者会議、メンバーだった草場先生にお伺いしたいのが、昨年六月の会議の報告書では、政府のコロナ対策について、「今後とも社会経済財政への影響、財源のあり方、施策の効果などについて多面的に検証が行われ、的確に政策が進められることを求めたい。」と、更なる検証の必要性が示されました。  先生は、政府によるコロナ対策の予算の使い方の精査や、あるいは効果の検証など、今後の検証の必要性についてどのようにお考えなのか、まずその点、教えてください。お願いいたします。

○草場参考人 御質問ありがとうございます。  先生おっしゃるとおり、予算の使い方という点に関しては、どうしても危機時には、最優先に必要な事項に関して、とにかくまず徹底的にいろいろな予算を使いながら感染対策を行うということは、私はやむを得ない部分があるかと思います。先ほどお話があったように、非常に未知のウイルスに対する防御策ということに関しては、どうしても様々な形でやらざるを得ない。  ただ、それに対する、事後の検証ということに関しては、やはり今回もなかなかそういった議論というのが乏しかったなと感じています。もちろん、病院等の病床の確保ということに関してたくさんのお金が使われている状況でございますけれども、果たしてそれが全て有効に使われたのか、そういった点に関してはいろいろな議論があると思います。  ですから、まず最初は大胆にお金を使うということはいいと思うんですが、ちゃんと事後検証ですね、しっかり定期的にチェックを入れていく、その仕組みを今後のパンデミックの中でも是非取り入れていかなきゃいけない、それが私自身の問題意識でございます。

○太委員 先生、どうもありがとうございます。  先ほど触れられましたのが、パンデミックにおいて、児童など学校教育への影響について言及されましたが、それと、昨年の報告書の取りまとめの直後に、子育て中の方の声も聞いて報告書に盛り込みたかったというふうに、先生、御指摘されておりました。  問題意識はどんなことだったのか。といいますのも、やはりこの三年間、特に乳幼児期から学童期にかけての子供たちというのが、本当に触れ合いやコミュニケーションを制約されながらの三年間、言語発達に影響が出る可能性も指摘されておる中で、是非とも、先生のこの点、この御発言に関しての御見解をお聞かせください。お願いいたします。

○草場参考人 今御指摘いただいた点、非常に重要な問題だというふうに捉えています。  今回は、お子さんに関しては比較的重症度が低いという形の感染症の特徴がございました。ただ、それがどうしても、高齢者と同様のかなりしっかりとした感染対策を行う、その部分はやむを得ない部分はあったんですけれども、現場ではやはり、そういったお子さんを抱えるお母さん方の非常につらい状況。  私自身もたくさんのお子さんを診療しているんですけれども、そういった中で、ふだんの活動が全て制限されている、いろいろな、日々の授業もそうなんですけれども、例えば学習発表会であったり、あるいは卒業旅行であったり、そういったふだん提供されているものが非常に欠けているという状況で、精神的にもかなり苦しんでいる状況というものがお子さん方にあったというふうに思っています。  ですので、発達障害というところまで全ての方が行くわけではないんですけれども、バランスですね、感染対策の強度というものをどう設定するか。リスクに応じて、高齢者と、ふだん健康な方と、そしてお子さんということをちゃんと分離しながら、きちんと議論をしていくということをしなきゃいけない。そういった点を今回のパンデミックでは大変強く感じました。

○太委員 どうもありがとうございました。  続いて、また草場先生に質問させていただきたいんですが、先生先ほど、平時から、先ほど来本当に岡部先生もおっしゃっているように、平時からの備えということは大変重要だと思っております。  平時から危機を想定したシミュレーション演習を定期的に実施することが必要だと先ほど先生お話しされましたが、私は、外交とか安全保障、このことを専門にしておりまして、先日ちょうど、台湾有事を想定したウォーゲーム、軍事、外交のシミュレーションに参加しました。これまで様々、各自治体と、また厚労省なんかが一緒になったシミュレーションなんかを見させていただきまして、本当に似通っているんだなと改めて思っているところであるんですが、まさに緊急時、有事を想定した様々なシナリオに基づくシミュレーションは、有事の際の意思決定と、また政策の改善を図っていく上で、やはり大変重要だというふうに思っております。  ただ、もう既に、新型インフルエンザ特措法の第十二条ですか、そこで、新型インフルエンザ等対策についての訓練を行うよう努めなければならない、こういうふうに規定されております。そして、既に様々な訓練、演習、シミュレーションが行われていることを承知しております。  それでは、先生が先ほど言及されましたが、具体的にどのような感染症危機を想定したシミュレーション演習を行うべきだとお考えなのか、その点について、もし御見解ございましたら教えてください。お願いいたします。

○草場参考人 非常に重要な御指摘だと思います。  シミュレーション演習という形で書かせていただきましたのは、一つは、今回は、有識者の集まるアドバイザリーボード、そして内閣のまた動きというものも、それぞれありながら、若干食い違いながら動いて、しかも、メディアに対する対策というものも、若干ぶれがありながらあった。だから、そういった点に関して、どういった形で意思決定をしていくかというプロセス、そういったものを是非シミュレーションでやっていただきたい。これが一つ、非常に重要な点でございます。  もう一個は、現場でコロナ対応をずっとしてきた医療機関の立場からいいますと、今回のような結構強毒性の、当初、アルファとか、本当にデルタぐらいまでは非常に強かったわけでございますけれども、そういった場合に、実際、普通の診療所、一般の病院というものがどういう感染対応を取るのか、そういったことに関して、本当に慌てふためいたところがあります。あとは、高齢者が療養している介護施設、高齢者が居住している老人ホーム等の施設、そういったところも本当に困惑したわけでございます。  ですから、そういった、地域の中の医療機関、介護施設も含めた想定演習というものをしっかり定期的にやっていく。その際に、自施設では何が足りないか、そういったものを確認しながら、不足分というものを補うような、そういったシミュレーションというのを、中央と現場と両方で、シミュレーションを是非やっていっていただきたい。恐らく自然災害ではそういったことが行われていると思いますので、是非、パンデミック等を想定した演習というものをやっていただきたいなというふうに考えております。  以上でございます。

○太委員 どうもありがとうございました。  同じ質問を、大曲先生にも教えていただけますでしょうか。これまで実際現場でどういったシミュレーションが行われてきたのかと、今後の課題について教えてください。お願いいたします。

○大曲参考人 ありがとうございます。  これまでの感染症対策のシミュレーションという意味では、特措法があって、特措法の中に幾つかガイドラインがありますけれども、では、そのガイドラインの内容をどうやって現場で落とし込んでいくのか、それができるのかどうかという形でのシミュレーションというものは、例えば国そして都道府県という形でかなり行われてきたと思います。机上演習が中心でありました。  もうちょっと現場に近いところになりますと、例えば医療機関、中でも感染症指定医療機関を中心とした医療機関、また地域によってはそこに関連する医療機関や診療所も含めて、感染症の事態の発生時のトレーニング、例えば患者さんの搬送ですとか、実際に受け入れたときの医療対応ですとか。私、新宿におりますけれども、新宿区ですと、例えばワクチンの接種時のアナフィラキシー等が発生したときの対応ですね、そうした訓練といったことも行っておりました。  これからやっていくべきことというのは、先ほどの草場先生のお話とも関わっていくのですが、政府レベルでの対応に関して言いますと、これは私個人の意見でありますが、ある程度蓋然性が低いような状況、例えば、エボラのように死亡率が高い、でも、その感染症が物すごく広がったらどうなるのかといったような想定の下に訓練をしていくといったことは大事だと思います。これは、コロナのような病気は例えばMERSであるんだけれども、だったらそれを想定して対応ができていたのかという観点からはやはり不足があったと思いますので、その観点からの発言が一つ。  それともう一つは、繰り返しになりますが、こういった新興感染症、特にパンデミックになるようなものは、全ての医療と介護の場でやはり受け止める必要がありますので、そこを、全体の底上げという観点でのシミュレーション、そしてトレーニングといったものはやはり必要になってくると思います。  具体的な話というところでは、先ほど草場先生がおっしゃったので、割愛したいと思います。

○太委員 先生、どうもありがとうございました。具体的に教えていただきまして、ありがとうございます。  今、先生御指摘された、蓋然性が低い、そういったケースもしっかりと想定をしていくということ、これは大変重要だと思っております。  国立感染研の感染症危機管理研究センターの斎藤センター長ですか、昨年この国会でも発言されておりましたが、これまで確かにシミュレーションは行われてきた、ですけれども、これまでのやり方というのが、過去問を解くことの繰り返しだった、これまで経験したところまでの対応をなぞっただけで演習は終わってしまっていた、過去のシナリオだけにとらわれて、訓練や演習で柔軟性を失っていたことを反省しているということでありましたので、是非とも、そういった意味でも、蓋然性の低い、そういったことも想定しながら、過去のおさらいだけでなく、柔軟性を持った演習ということが必要だと思っておりますので、引き続きこの点も参考にさせていただきたいと思っております。どうもありがとうございます。  続きまして、内閣感染症危機管理統括庁の実効性についてお伺いしたいんですが、先ほど大曲先生、感染症をまず国の危機管理の対象だとしっかりと明確に位置づけることだ、その上で指揮系統も明確に位置づけるべきだということでお話しされましたが、今回の統括庁を先生はどういうふうに見られているのか、もし御見解がありましたら教えていただきたく、お願いいたします。

○大曲参考人 ありがとうございます。  危機管理統括庁に関しては、これはやはりあるべき組織だと思っています。もちろん、内閣レベルから厚生労働省、そして我々研究機関レベル、もうちょっと言えば現場レベルといったところに筋を通した指揮命令系統ができるということは、非常に重要であります。非常に分かりやすいですね。それが一つ。  また、もう一つは、危機管理統括庁があるということで、私たちが想定するのは、統括庁の下に各省庁が連携して動くということが非常に重要なんだと思います。それができるようになる、迅速に。そうした形ができるということが非常に重要だと思っております。

○太委員 先生、ありがとうございました。  連日この統括庁の問題を国会で審議させていただいておりますが、まだやはり縦割り構造が残って、複雑な指揮命令系統や、権限の不備など、まだまだ司令塔機能が果たせる状況とはなり難いと思っておりますので、そこはしっかりと、これからもよりしっかりとした明確な指揮系統へとつなげていかなきゃいけないと思っております。ありがとうございます。  最後に、ごめんなさい、余り時間がないですね。そもそも、今回の危機管理統括庁、岸田総理が想定したのが、健康危機管理全般を行う健康危機管理庁としての構想でスタートしたはずなんですが、感染症危機管理を含めたあらゆる危機に包括的に対処するオールハザード型の危機管理の組織も必要だと思うんですが、その点に関して教えていただきたいと思っております、先生方の立場から。岡部先生、もし御見解ありましたら、お願いいたします。

○岡部参考人 御質問ありがとうございます。  非常に大きい御質問なので、どうして答えたらいいのかなかなか思いつかないところでありますが、ただ、オールハザードというのは、先ほども申し上げましたように、共通点としてのハザード対策はいっぱいあると思います。しかし、病気を一つ取っても、慢性の病気であったり急性の病気であったり、うつり方が強い弱い、重症度が違う、いろいろなタイプがありますので、全てをひっくるめればいいのであるということではないと思います。  私は感染症の立場ですので、今まで日本の対策といいますか、感染症法の中でも、不明のものに対する対応というのは非常に弱い。病気が決まったものに対しては先ほどの訓練についても対応があったり、あるいは仕組みがあったりするんですけれども、不明のものを早く見つける、早く見つけてそれに対して対応していくということについて、感染症法の中でも私は欠点だというふうに思っています。  つまり、今回も、COVID―19が出た、原因不明だったけれどもCOVID-19だと分かった、それから我が国に入ってきたのでありますから、この病気に対するというのはあるんですけれども、それが日本に入ってきたときに、最初に入ったときに見つけられたかどうか。不明の肺炎というものでは、それをシェアする仕組みや何かがないわけですね。  ですから、オールハザードというのは不明のことに対する対応が多いんですけれども、一定の筋道をつけておかないと、何か空想のような形ばかりになっているのではいけないので、きちんとしたレベルをやって、だんだんそれのレベルアップをしていくという考え方が重要ではないかと思います。以上です。

○太委員 先生、どうもありがとうございました。  ごめんなさい、時間になってしまいまして。本当は草場先生に、先生が、感染症有事のときにはかかりつけ医の制度、これをしっかりと橋渡し役として機能させるべきだということであって、私も本当に賛同しているところなんですが、それに関して説明していただければと。どうかよろしくお願いします。最後、お願いします。

○草場参考人 ありがとうございます。  先ほど強調いたしましたけれども、やはり、平時と危機時を完全に分離することはできない、つまり、平時にできている以上のことを危機時に要請されてもできないというのが、正直、医療機関を運営する立場からの実感でございます。ですから、感染症対応も、事前にきちっとしたそういう体制をつくらなきゃいけない。  そして、多くの医療機関が実際、感染症に対応したわけでございますけれども、中にはなかなかできなかった、構造的な問題とか、いろいろな、医師の問題も含めてあった。ですから、構造的な対策というものを平時からつくるためには、やはりかかりつけ医というものの機能をしっかり向上させていく。  そして、現状でいいんだということではなくて、それは国がちゃんと対策をするからいいんだではなくて、我々医療者自身も、感染対応ができるような環境をつくっていくということを平時からやるべきである。それを促すようなかかりつけ医機能の強化というものを、今回の議論の中で、また別の法案でございますけれども、是非取り組んでいただきたいというふうに強く思っています。

○太委員 どうも本当にありがとうございました。引き続き、本日の御助言を生かしながら、危機管理体制強化へと進んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。