Vol.48:米軍とコロナ 日米同盟が大事だからこそ「国民の命」を主張せよ
全国各地の在日米軍基地やその周辺自治体で新型コロナウイルスの感染拡大が相次ぎ、
日米地位協定の課題が改めて浮き彫りになりました。私の選挙区にある厚木基地やキャンプ座間
の近隣住民や基地の中で働く人たちからも、基地内の感染状況の実態が見えず、杜撰な対応が続い
ていることへの不安や怒りの声が多く寄せられています。
日米地位協定で米軍は日本出入国時に検疫を免除されています。米軍はコロナ禍で
「日本と整合的な措置をとる」としていたにもかかわらず、昨年9月以降、日本への
出国前と入国直後のPCR検査をしていなかったことが判明しました。
日本を取り巻く安全保障環境は急激に悪化し、在日米軍の重要性はより一層高まっています。
基地内でコロナ感染拡大を安易に許せば、反米・反基地の国内世論が高まり、日米関係が足元から揺らぎかねません。
米軍を一方的に責めるつもりはありません。米兵は命を張って任務を果たすため、
母国から離れストレスある中で厳しい訓練を繰り返す一方、地域に溶け込もうとしています。
兵士たちは地域のボランティア活動などに積極的に参加しており、私も一緒に汗を流すことがあります。
このような米軍の努力は評価すべきです。
今回、在日米軍と日本側のコミュニケーションが不足し、情報共有が上手くいかないなど
運用面での問題がありました。しかし本質的には構造的な問題があります。日米同盟は米国側に
日本防衛義務があり、日本側に基地提供義務がある片務的な関係です。米国に守ってもらっているため、
日本政府が米軍に対して強く要求できず、米軍の特権である地位協定を見直せば同盟に悪影響を与えかねないとの懸念が根底にあります。
1960年の締結以降、一度も改正されていない地位協定の見直しは、戦後日本の安全保障政策を
根底から見直すことにつながります。米国との交渉は、日本がどのような同盟上の役割を果たし、
外交力や防衛力をいかに向上させるかという長期的な構想を示し、その中に地位協定改定を位置づける必要があります。
一方、今回のような国民の生命や健康に関することについて、日本政府はもっと迅速に、
強く米国に要請すべきです。地位協定で検疫が米軍に任されていても、要望や働きかけは
繰り返し行うべきです。韓国では大統領自ら在韓米軍司令部に要請を繰り返し、
日本よりも厳格な米軍の水際対策が行われていました。検疫に関しドイツは国内法適用を定め、
イタリアでは米軍の検疫に関与できる仕組みを整えています。
最優先である国民の生命・健康を守るセーフティーネットを日本政府が米国に強く主張し、
確保しなければなりません。そのことこそが混迷を深める国際情勢下で日米同盟を支える基盤づくりにつながると私は信じています。
2022年1月
衆議院議員 太ひでし 拝