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Vol.31:「危機管理庁」創設で感染症や自然災害から命を守る

 戦後75年。新型コロナの第2波が猛威をふるう中、今年も平和に思いを寄せる8月を迎えました。私は戦後50年の節目の年、高校3年生の時に平和を守る政治家を志し、これまで外交安全保障や危機管理の問題をライフワークとして取組んできました。

台風シーズンの本格化により豪雨災害への懸念が高まります。感染症拡大と自然災害による複合災害から国民のいのちと生活を守るための備えとして、米国の緊急事態管理庁(FEMA)のような危機管理庁(日本版FEMA)の創設を提言します。

米国のシンクタンクでの研究員時代、FEMA長官がハリケーンや山火事などの有事に際し、大統領の代理として強い権限のもと陣頭指揮を執る姿に彼我の違いを目の当たりにしました。

未知のウイルスへの対処という国家的な有事では、専門家の知見や科学的な根拠に基づいた総合的な政策判断が求められます。しかし今回のコロナ禍で一部の官僚の発案と官邸の突発的な判断による政策が続き、感染拡大への国民の不安が高まりました。政府の専門家会議にも諮られず、感染者ゼロの県を含めて全国一律で学校一斉休校が実施され、子どもの学習の遅れだけでなく、家庭や学校、自治体の現場にも様々な影響が及びました。

あらゆる緊急事態を一元管理する権限が与えられるFEMAの長官には、危機管理への従事経験や能力が法令上必要とされ、スタッフは危機管理に関する豊富な経験と知識を有する7,000人超の常勤職員と約1万人の非常時対応職員で構成されています。一方日本では、感染症と自然災害は担当する所管が分かれています。自然災害に対処する内閣府防災担当の大臣は他の省庁の大臣が兼務することが一般的で、職員も他省庁からの出向を中心に100名ほどで、これまでの災害での経験やノウハウの集積や共有が十分になされていません。

今回のコロナ対策では国と地方の連携や調整もうまくいっていません。感染症予防対策や経済対策など、様々な施策が一刻の猶予もなく求められているにもかかわらず、休業要請や補償のあり方を巡り国と地方の間で軋轢が生じました。「Go To トラベル」事業では地方の実情を顧みずに国が政策をごり押ししたため、全国に感染者が拡大しました。常設の機関の設置により、平時から国と地方の連絡や調整の拠点と職務権限をあらかじめ決めておき、緊急時にスムーズな意思疎通を進める体制を早急に整備するべきです。

 災害大国日本では、様々な有事から国民の命を守り抜くことが政治家の重要な役割です。平時から国民が安心できる危機管理の備えを確立し、そのノウハウを世界に発信していくことを期待されます。だからこそ危機管理庁の創設で、今回の「百年に一度」と言われたコロナ危機であぶりだされた課題を克服し、国民の命を守るために活動してまいります。

2020年8月

太 栄志 拝