太ひでしが、「グローバルに考え、地域密着で行動する」
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Vol.28:市民の声で政治が動く! どさくさ紛れの検察官定年延長は許されない

 コロナとの長期戦が続く中、日夜ご尽力されている医療従事者の皆さん、自粛要請にご協力されている全ての皆さんに心から感謝申し上げます。感染者数が減少傾向とはいえ油断は禁物です。生活やお仕事でのお困りごとなど私の活動レポートの返信ハガキやHPのアンケートをご活用いただき、引き続きお声をお寄せください。

 そんな中、検察幹部の定年を政府の判断で延長できるようにする検察庁法改正案の審議が先送りとなりました。政府与党は今国会での成立を目指してごり押ししていましたが、著名人や多くの国民の抗議の高まりを受けて方向転換しました。英語の民間試験導入見直しやコロナ対策の現金10万円給付など、市民の反発で強引な政治が変わるケースが相次いでいます。改めて主権者である市民の声が政治を動かすことが証明されました。

 今回の法改正は、今年1月に長年の法解釈をあっさり覆して東京高検検事長の定年が延長されたことを、後付けで正当化するためのものでした。この検事長は「官邸の守護神」と呼ばれ森友学園問題や政治家の「政治とカネ」を巡る事件を不起訴処分にして政権中枢への捜査を阻止してきたと目されていました。前法相夫妻や首相の「桜を見る会」での選挙法違反疑惑などへの追及逃れのための人事と疑われても仕方ありません。

 検察官は行政府の一員であり、検事総長らの任命権は内閣にあります。一方、検察官は政治家の不正を捜査し、逮捕・起訴することもできる強大な権限を有するなど準司法官でもあるため、政治に対する中立性と一定の緊張関係が強く求められます。戦後の歴代内閣はその趣旨を踏まえ、検察側が決めた幹部人事案を尊重する慣例が続いてきました。中央省庁の幹部人事を一元的に掌握する内閣人事局も、検察官の人事については例外とされています。

 しかし法改正されれば、戦後積み重ねてきた検察官の独立性が守られなくなる恐れがあります。時の政権に都合のいい検察幹部の定年は延長するが、都合の悪い場合は延長しないということが可能になります。元検事総長らが「政治介入によって三権分立の否定につながりかねない」と公然と批判する異例の事態にもなりました。

 長期政権のもと、役人の忖度によって本来公正中立でなければならない行政が歪められてしまう事件が相次ぎました。今回の法改正が実現すれば、検察官までもが官邸に過度に忖度して政権の意向に沿って事件をもみ消したり、あるいは容疑事実をつくりあげて罪のない人を逮捕することが起きかねません。世界的なコロナ危機のどさくさに紛れて国の根幹を揺るがしかねない法改正は許されません。引き続き、地域の声に寄り添いながら、市民の力を結集して新しい時代の日本づくりに取り組んでまいります。

2020年5月

太 栄志 拝