太ひでしが、「グローバルに考え、地域密着で行動する」
(Think globally, act locally)中で見えてくることを発信しています。

Vol.19:トランプ化する日本外交?泥沼化する日韓関係

私は米国での研究員時代から韓国の外交官や政治家、軍人との交流を通して、北朝鮮や中国の動向に適切に対応するため日韓の戦略的な協力が極めて重要だと考え行動してきました。しかし今、日韓関係が大きくこじれ、泥沼化しています。市民交流にまで影響し、大和市がこれまで韓国から受入れてきた学生のホームステイが急きょ中止になりました。

日本は半導体材料の韓国向け輸出規制を厳格化し、更に安全保障上の輸出管理で手続きを優遇する国のリストから韓国を除外する決定をしました。兵器に転用可能な品目の管理体制などが不十分だと韓国に懸念を伝えてきましたがここ数年協議にさえ応じてもらえず、信頼関係が崩れていました。韓国がまずは安全保障上の懸念を払拭する必要があるのは言うまでもなく、日本はあくまでも通商協議を通して是正を求めるべきです。

ただ、当初日本側が徴用工問題への韓国の対応に対する不信が背景にあることを示唆したように、韓国及び国際社会も今回の措置を事実上の日本の報復措置とみています。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(7月2日)はコラムで「トランプ化する日本外交」として、日本が政治問題と通商政策を混同し、トランプ流で即興的、一方的な方向に外交を大転換したと批判しています。日韓請求権協定での国家間の約束を守らない韓国側に明らかに否がありますが、自由貿易の推進を掲げ、国際社会に貿易ルールの多国間協調を呼び掛けてきた日本が、他国に政策変更を迫る手段として貿易措置をとるべきではありません。日本はこれまで尖閣問題でレアアースの対日輸出を停止した中国や、安全保障を理由に鉄鋼などに追加関税を課した米国に強く抗議してきたはずです。

日韓の対立激化は東アジアの安全保障環境を不安定にし、日本の平和を脅かします。北朝鮮が新型の短距離弾道ミサイルを相次いで発射し、中国とロシアの軍用機が共同で竹島周辺の日本の領空に侵犯したのは、亀裂を深める日韓とその同盟国である米国の反応を試したものと見られます。韓国は日本との軍事協力協定を破棄する可能性をにおわせますが、日韓双方に有益な安全保障協力を解消することは北朝鮮や中ロを利するだけで賢明な判断ではありません。

韓国との友好関係は日本にとって国家百年の大計であり、日本の平和と繁栄に直結します。国際社会で保護主義が広がり無秩序化していく中で、日本がこれまで大事にしてきた自由貿易や自由で活発な通商によって平和が保たれる国際秩序を守り抜くための政治のリーダーシップが今こそ求められます。私も神奈川13区から日韓関係の改善へ向けた長期的な取組を粘り強く進めてまいる所存です。

2019年8月
太 栄志 拝