太ひでしが、「グローバルに考え、地域密着で行動する」
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Vol.8:移民政策なき日本は、世界第4位の移民大国

最近、コンビニや飲食店などで働く外国人をよく目にします。
日本の労働者の約50人に1人は外国人で、生活に身近な業種において「外国人労働者抜きでは立ち行かない」状況が既に生まれています。経済協力開発機構によると日本は、先進国の中で外国人の移住数が米国やドイツ、英国に次いで第4位(2015年)です。
私たちの課題はもはや「移民を受入れるかどうか」ではなく、「外国人労働者にどう社会の一員になってもらうか」という段階にきています。

なし崩し的な外国人労働力導入が続く日本

政府は移民政策に断固反対する与党議員や保守層の支持者への配慮から「移民政策はとらない」との立場を続け、外国人労働者の多くを「技能実習生」や「留学生」という制度で受入れてきました。
人手不足が深刻化する中、政府は6月に外国人の就労拡大の方針を表明しました。ただ、従来の延長線上の発想で、実習生の就労期間延長やこれまで忌避されてきた単純労働分野にも実習生を受入れるなど、国民的な議論が全くない中で更なるごまかしを続けようとしています。
本来の目的とは異なる形で受入れることで、外国人労働者は居住移転や職業選択の自由がなく、劣悪な労働環境で働かされています。

「選ばれる国」へ向けての環境整備を進めよ

国際的な外国人労働者の獲得競争が厳しくなる中、安い賃金で使い倒すという発想では「選ばれる国」から日本は遠ざかります。
政府はまず移民政策にまっすぐに向き合い、社会の一員になってもらうための環境整備を急がなければなりません。外国人労働者の権利擁護のための法整備や外国人と日本人の不当な賃金格差の改善、家族も含めた社会保障や教育に関する手立てが必要です。国内労働者の雇用への影響の検討も欠かせません。そして在留資格として、社会に溶け込むために必要な日本語要件の強化が肝要です。
日本の歴史や文化、伝統を守りつつ、厳格な受入れ基準のもとでいかにして質の高い外国人労働者を受入れていくか。多様な価値観を認める活力ある社会を実現するために、移民政策の国民的な議論を通して、新しい社会像を政治が示していかなければなりません。

2018年9月
太 栄志 拝